2006年07月13日
神谷 徹展
SCAI THE BATHHOUSEから送られていた神谷徹展のDM、一見すると黄緑から緑へと単純なグラデーションが描かれているようなだけで、具体的な作品をイメージできなかった。会場を訪れてやっと分かる。遠目にはやはりカラー・グラデーションなのだが、近づいてみると、照明の当たり具合によって、そこに細い線で風景が描かれているのだ。DMを仔細に見てみると、確かに微かにではあるが像が浮かび上がって来た。
今回の神谷の個展ではこの作品群のほかにまったく別の作品群がある。それはソフトフォーカスによるフォトリアリズム的作品群である。彼の作品はこれまでに見ている筈なのだが記憶が定かではない。それは2003年、府中市美術館で開催された「ゾーン─不穏な時代の透視者たち」展。この展覧会では加藤泉や長谷川繁といったまさしく「不穏」の文字が相応しい作家の作品ばかりが記憶に残り、神谷の作品はその記憶の影に隠れてしまったのだろうか。だから今回の個展で、改めて彼の作品をじっくり見ることになった。
色面の上に消え入りそうな細い線で描かれた風景の線画、ソフトフォーカスによるフォトリアリズム的作品。ある意味では「現代絵画」においては常套的とも言える表現方法である。だが神谷の場合には恐ろしいほど丹念に表面が仕上げられている。まるで伝統工芸における職人技、と言っても良いくらいだ。そして異様なパネルの形状。正面から見れば普通の平面であるが、側面から見ると縁が鋭角で台形のような形状をしているのだ。つまり描かれている表面は平面性をより強調され、皮膜としてのそれを際だたせている。「不穏」という言葉を再び用いるとすれば、そこにこそあるのではないだろうか。オーソドックスとも言える「現代絵画」の描法を、希薄な存在である皮膜の上で、愚直ともいって良いほどに丹念に繰り返す。その行為こそ「不穏」とは言えないだろうか↓
http://www.scaithebathhouse.com/ja/
神谷の作品をじっくり眺めるのは初めてのように記したが、本当は以前にも接していた。それは今は取り壊されて無くなってしまったが、上野公園にあった水道局の工事現場を囲む塀。そこにカラーグラデーションの帯が描かれていた。東京芸大方面に向かう途中、いつも不思議に思いながら眺めていた。それが神谷の作品であったことを、この会場に置いてあった彼のファイルで初めて知った。(提髪 明男)