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2008年04月21日
宮島達男 | Art in You / クリテリオム72 飯田淑乃

宮島達男の作家としての始まりはパレルゴンだ。
パレルゴンとは1980年代に神田にあった画廊の名である。画廊名はカント/デリダに由来し、「作品とは無関係な部分」を意味する。宮島が画廊パレルゴンで発表してから25年の歳月が経つ。

     *

1987年から発表しているおなじみのLEDのデジタルカウンターを使用した作品を中心に、水戸芸術館で宮島達男の個展が開催されている。
会場の壁にアトランダムな時計の文字盤の0に該当する部分に鏡が貼り付けられ、すぐ横に英単語のメッセージが直接描かれた《Counting you》、国内4ヶ所で行ったワークショップキャラバン参加者の身体に数字をペイントした写真《Counter Skin》などアナログ要素が色濃い新作、ワークショップ参加者が制作したパソコンのデスクトップ上で残命時間がカウントダウンされる新作《Death Clock》などが展示されている。そして、今回の展示の目玉は《HOTO》だろう。鏡が貼り付けられ、LEDの点滅する/しない数字を身にまとうきらびやかなその塔は宇宙のイメージを連想させる。構造上、内部に電子部品が組み込まれているため、展示室は新品の電化製品特有の匂いが充満していた。

しかし、「作品」と記しながらもひっかかりを覚える。これらは「作品」というより「鏡像体」だ。数字を透過してみえるさきからは、これまでの自分の体験を濾したものにも似た、ある種の感情がはじき返されてくる。
数字はときとして言葉より饒舌だ。意味をまとい、意味を捨て去りながら、規則的に、または不規則的に明減を繰り返す。カウンターが動き続けるように、たったひとりの作家によって生み出された作品から派生する言葉は無限に続き、感情はかたちを変えて連鎖する。これらをひっくるめて「作品」と呼ぶのだ、という制作者と企画者のコンセプトが顕著だ。そのため、展覧会として、展示されている作品の質量とは裏腹に、力業を感じさせる仕上がりになっていると感じる者は少なくないだろう。
「Art in You」??「あなたの芸術」と題される展覧会のもとで、私の中の芸術とは何なのか?と自問しながら次の会場に向かった。

     *

同館にて同時開催中の若手作家の育成を担うプログラム「クリテリオム」では、脱力感を感じさせる幼児番組のパロディ映像の作品が、保育園のプレイルームのようにしつらえた展示室で空々しく流れていた。
架空のご当地アイドルになりすますことをテーマとする飯田淑乃の今回のモチーフは水戸納豆だ。納豆を奨励する歌のお姉さん「ごけんゆかり」と納豆キャラクター「なっちぃ」。発注制作したのぼりや架空の商品パッケージ、いまはやりのゆるキャラを彷彿とさせる納豆を模した納豆天使のキャラクターは口の周辺に納豆とその糸をひきながら見る者に語りかけてくる。「ごけんゆかり」の歌唱力は申し分ないのだが、歌もキャラクターも心に響くことはない。地域やグッズ製作所などとコミットしながらも、空虚さが漂っているのはヴァーチャルアイドルとして成立させようとする作家自身のバイアスによるものであり、それはまた「美術(アート)」から生じるものでもあるだろう。生活にコミットしようとすればするほど、美術はかみ合わない。美術と生活の絡みづらさを露見させた作品となっている。

     *

これら2つの展示を見て生じた感情は苛立ちだった。なぜ苛立つのか自分自身に問いかけて数日が経過した。2人の作家はいたって大真面目だ。ただし、無自覚な善意は悪意を誘発する。

この2つの展覧会に通底する企画側の悪意を感じながら、しかし、それは企画側の善意なのかもしれず、善悪の彼岸はわからない。二項対立によって世界を分けられたら、こんな楽なことはない。しかし、世界は加速度を増しながら、分断が進められている。近代にくらべ美術の影響力はもはや見る影もないが、それでもなお美術はこのような状況において危険因子を孕んでいるということを忘れてはならない。

2つの展覧会は、決して良いとは言えないが、悪いとも断言できない。なぜなら、美術館施設という外縁が生じたときに、これらはエルゴンに転化するからだ。それはまた展示されている作品とは別の話になる。(浦野依奴)


水戸芸術館 2008年 2月16日(土)? 5月11日(日)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html

宮島達男 | Art in You公式サイト
http://artinyou.jp/

飯田淑乃公式サイト
http://www33.tok2.com/home/ymusic/


編集部註:正確には宮島達男氏の初の個展は画廊パレルゴンではありません。