2008年05月16日
outlet??非作品によるブリコラージュ
有楽町駅から新橋に向けて外堀通りを歩いてゆくと右手に洋菓子舗ウエストがあり、その2階に銀座芸術研究所はある。この研究所は地場賢太郎、三友周太、菅間圭子、森下泰輔ら4人のディレクターによるインディペンデント・ギャラリーだ。
銀座芸術研究所にて「outlet??非作品によるブリコラージュ」展(2008年5月5日(月)-18日(日))が開催されている。今回のディレクターは地場であり、企画は芸術人類学者の中島智である。中原浩大、小川信治、袴田京太朗ら3名の作家による「非作品」が出品されている。展示されているものは作品にあらずして「作品」である。
中原は1才になる愛娘の手になる「子どもの描いた絵」、「子どもと一緒に描いた絵」、「子どもに描いた絵」、「子どもが生まれる何年か前に描いた絵」など、おそらく作品よりも大事な6点のスケッチを展示し、小川は素材コレクションの一部である古写真を巧妙に組み合わせることによってウースター教会とエッフェル塔を??スリリングで繊細なやり方で??同じ画面上に存在させ、モンタージュ技法による時空間の超越を試みている。
一番遊び心満載だったのが袴田でテーブルの脚に中華どんぶりやコップなどを履かせ、卓上には落下してひしゃげた粘土の塊をそのままかたどった樹脂の塊や、マリア像の頭部を十数体まとめて樹脂でかたどって山状にしたものなどが並べられている。
「outlet」展に参加した3人は、スタイルや技法材料、それから発想ばかりではなく、「作品」そのものの捉え方のスタンスが異なる。たとえば小川や袴田は、素材として「作品」化可能な要素が多い、これに対して中原のスケッチは「作品」化を拒むところがある。「子どもが生まれる何年か前に描いた絵」などは「作品」の素材となりうるかもしれないが、「子どもの描いた絵」や「子どもと描いた絵」は、これとは別次元に位置する。中原のなかでは、これらスケッチは作品よりも大事な部分に位置づけられているはずであるからだ。今回、それらをあえて展示したことによって??「非作品」を「作品」化することによって??中原自身のスケッチというものの転換を試みている。一言で言えば、一時的に中原自身の手からスケッチを離した状態をつくりだすことで、スケッチと作者主体の関係に変化をもたらし、その結果として「作品」なるものの存立に揺さぶりをかけようとしているのだ。そして、この「作品」のもつ性質上、今後、公の場に現れることは皆無であることが予想され、たった一度きりの展示であったとしても、この一度の行為が、刻印のように刻み込まれることも中原は気づいており、会場において有料配布されているリーフレットにもその思いが綴られている。
また、小川や袴田が、作品化の要素が大きい素材と認識し展示したからといっても、やはり、これらは非-作品であろう。その上で小川は写真の加工も従来の手法のうちに収めるようなかたちでのシンプルな「作品」化を行い、袴田は先述したように遊び心に見せかけた過剰なかたちでもって「非作品」の「作品」化を行っている。
今回の展示において意識的に「作品」化が行われ、これら「アウトレット」と称された非-作品の方向性はあたかも作家が定めるかのように思われるが、実際はもの自体が今後の展開の指針を示すだろうという予感がした。(浦野依奴)
銀座芸術研究所 2008年5月5日(月)-18日(日)*最終日は18時まで
http://www.digiart.tv/